今回お話を伺ったのは、Kindle出版プロデュースを中心に活動されている湯川恭祥さん。
「何を書けばいいかわからない」という段階から、ヒアリング、構成づくり、執筆、入稿までをサポートし、一冊の本という形で個人事業主や中小企業の想いを届けるお仕事をされています。
穏やかで柔らかな語り口が印象的な湯川さんですが、お話を伺って感じたのは、人の話を聞くことを楽しむ姿と、その人自身の魅力を丁寧に言葉へ落とし込もうとする誠実な姿勢でした。
今回は、現在のお仕事のことから、Webライターとして歩み始めたきっかけ、今後挑戦したいことまで伺いました。
「何から始めればいいかわからない」企画段階から伴走する湯川さんのサービス
-現在のお仕事について教えていただけますでしょうか?
現在は、主にKindle出版のプロデュースを行っています。
何を書いていいかわからないという段階から、お客様にヒアリングを行い、最後の入稿までサポートしています。
また、集客が苦手な方には、noteの運用代行やPodcastを使った集客サポートも行っています。
-ヒアリングは対面で行うのですか?
基本はオンラインですが、お客様によってはZoomが難しい方もいらっしゃるので、関東圏であれば対面での対応も可能です。
オンラインをご希望の場合は、ZoomやGoogle Meetを使ってお話を伺っています。
それぞれにメリットとデメリットがありますが、やはり対面のほうが表情がよくわかるので円滑に進みやすいですね。
何もないっていう人ほど、実は何かある
-どのような方に向けたサービスですか?
主に中小企業や個人事業主で、自分の想いやサービスをもっと発信したいという方や、他社との差別化がなかなかできずに悩んでいる方に向けて、ブランディングの一環としてKindle出版を提案しています。
テレビに出ているような方や大企業の社長さんは、大手出版社がバックについていたり、出版社の方から「本を出しませんか」と声がかかったりすることも多いんです。
なので、そういった方々というよりは、小規模な事業者の方が主な対象ですね。
-実績がない個人事業主でも、本を出す意味はあるのでしょうか?
これまで何人かのお客様に、「人生で一度も本を出したいと思ったことがないんです。どういうときに本を出すものなんですか?」と聞かれたことがあります。
でも、「何もない」と思っている人ほど、実は何かあると思うんですよ。何もない人なんて、生まれてこの方家から一歩も出たことがない人以外、いないと思っています。
人それぞれストーリーがあって、何らかの理由や想いがあって今の仕事をしているはずなんです。
だから、実績がないとか、そういうことはあまり関係ないと思っています。
むしろ何者でもないからこそ、Kindleで「本を出している人」という権威をつけることは、一つの戦略として有効なんじゃないかなと思うんです。
特に、職人肌の方は発信が苦手な方が多いのでKindle出版と相性が良いですね。
-自分自身や事業を見直す機会にもなりそうですね。
そうですね。人生そのものというより、今やっている事業を深掘りすることが多いです。
その過程で、学生時代のことや初めて就職した頃のことなど、これまでの経験を振り返ることもあります。そういった話をしていると、懐かしさを感じたり、自分の考えを整理できたりするんですよね。
会社であれば、ビジョンや経営理念を見直すきっかけにもなると思います。
そういう意味でも、出版に向けて対話を重ねる時間は、とても大切な時間なのかなと思っています。
文章を書くだけじゃない、大切なのは人との対話そのもの
-現在の仕事で、最もやりがいを感じるのはどんな時ですか?
そうですね。Kindle出版をやっているので、「文章を書くのが好きなんですか?」と聞かれることも多いんです。
もちろん嫌いじゃないんですけど、一番楽しいのはヒアリングしているときなんですよね。知らないことを知れるのもそうですし、業界も違えば年齢も違う。自分とは違った人生を垣間見られるって、なかなかない経験だと思うんです。
なので、それが一番面白いかなと思っています。
-ライターに向いているのは、どんな人だと思いますか?
文章を書くのが上手いのがライターや作家だと思われがちですし、もちろんそれも大事だと思います。でも私は、「ちょっと聞いてよ」って言われる人の方が向いているんじゃないかなと思っています。
人の話を深掘りしようとか、インタビューしようと思っても、それが苦手な人って本当にいるんです。だからこそ、自然と相手から「聞いてよ」って言われる人は、もともとそういう素質があるんじゃないかなと思います。
なので、取材やライティングの仕事にも向いていると思いますね。
何より大切にしているのは、“その人らしさ”を文章に残すこと
-インタビューや文章を書くうえで、大切にしていることはありますか?
そうですね。当たり前といえば当たり前かもしれないんですけど、その人の人柄や雰囲気を意識することです。
たとえば、穏やかで柔らかな話し方をされる方なのに、出版ブランディングや経営理念ばかりを意識して、文章だけが強い断定口調になってしまったら、その人の言葉ではなくなってしまうじゃないですか。
本来、Webの文章は言い切らないと読者がモヤっとすると言われます。でも、「この方だったらこういう言い方をするだろうな」とか、「このくらいの柔らかさがその人らしいな」とか、そういうニュアンスは意識していますね。
あとは、文章とは直接関係ないんですけど、なるべく即レスを心がけています。
わからないことを聞いて、すぐ返事が返ってきたらお客様も安心するじゃないですか。逆に、2日、3日と返信がないことが何度も続いてしまうと、不信感につながってしまうと思うんです。
そうすると、なかなか本音を話してもらえなくなってしまうと思うので、コミュニケーションはすごく意識しています。
知らないことを知るのも、この仕事の面白さ
-最近のお仕事で、特に印象に残っているものはありますか?
今まさに仕上げている最中のお客様の本が、特に印象に残っています。
その方が運営している知的サードプレイスには、早稲田大学の教授や弁護士、テレビに出演している脳科学の先生など、さまざまな分野の専門家が集まるんです。脳科学やAI、アートなど、いろいろなテーマについて、それぞれの立場から意見を交わす場で、私はその場を紹介する本づくりをお手伝いしています。
もともと脳科学や少しスピリチュアル寄りの話には興味があったんですけど、グリア細胞とかアストロサイトとか、今回初めて知った言葉もたくさんありました。
興味があるので、「これってこういうことなんだ」と知識が増えていくのがすごく面白いですし、印象に残っていますね。
-湯川さんはとても勉強家なんですね。
これね、多分、違うんですよ。
Webライターを始めた当時は、美容系の記事とか夜のライトワークの記事とか書いていたんですけど、もちろん最初から知っていたわけじゃないんです。なので、調べることはたくさんあります。
多分、好奇心が強いんでしょうね。「これってこういうことなんだ」って調べるのが苦じゃないんです。
仕事柄、日々いろんなことを調べているので、周りからは「よくそんなこと知ってるね」って言われることも多くて、雑学王みたいな扱いをされるようになりました(笑)。
-何にでも興味を持つことが、このお仕事にはすごく大切なんですね。
そうですね。でも、本当にどうしても興味を持てない分野の案件って出てくると思うんです。
そんなときでも、ここだけは守った方がいいというボーダーラインがあります。私の中では、ちゃんと表記を守ることですね。
例えば大学名ひとつとっても正式名称はどうなのか、専門用語も本当の名称は何なのか、そういう部分はきちんと確認するようにしています。
あとは数字ですね。統計データや企業情報は公的機関や公式サイトでチェックしないと、お客様に迷惑をかけてしまうので。
そこを徹底すると、情報も取りやすくなりますし、その後の仕事も進めやすくなるんです。なので、その部分はしっかり意識しています。
AI時代の変化が、働き方を見直すきっかけに
-今までのご経歴を教えてください。
もともとは茨城県で生まれ育って、製造業やトラックドライバー、倉庫の仕事など、現場系の仕事をしてきました。
でも20代後半で、左足がしびれて力が入らなくなってしまったんです。頚部脊柱管狭窄症と診断されて頸椎の手術を経験して、しびれ自体はなくなったんですけど、無理して力仕事をするとすぐ痛みが出るようになってしまいました。ヘルメットをかぶるだけでも痛かったですし、今まで当たり前にできていたことが本当にできなくなってしまいました。
職を転々としながら、自分でも何かしたいという気持ちはあったんです。でも、プログラミングができるわけでもないし、「これならできる」というものも特になくて。いろいろ調べた結果、日本語は話せるし書けるから、Webライターだったらできるんじゃないかなと思ったんです。
正直、最初は文章を書くのが好きだったわけでもないですし、他にできることがなかったから始めた、というのが本音ですね。
-そこから今のサービスを提供するまで、どういった経緯があったのですか?
最初はSEOと呼ばれるWeb記事を書く仕事をずっとやっていました。
でも去年くらいからAIがかなり発達してきて、「AIを使っていいから単価を下げます」という話が増えてきたんです。SEO記事を書く仕事自体がなくなるとは思っていないんですけど、この先そこに広がっていく未来はちょっと描けなくなりました。
それで去年くらいから模索し始めて、やっぱり自分は話を聞くのが好きなんだなと改めて思ったんです。
もともと小説や音楽など、創作好きだったので、Kindle出版や小説を書くような仕事の方が自分には合っているのかなと思って、今はKindle出版に振り切っています。
ライターがまったくいらなくなるとは思っていません。でも、ただ書くだけではなく、それ以外の価値も提供できるもの書きになっていかないといけないなと思っています。
画面の前で完結していた働き方から、人と直接関わる時間を大切にする働き方へ
-在宅ワークでの時間管理は、どのようにしていますか?
SEOをやっていたときは毎日のように納期があったので、「今日はこれをやらなきゃ」「明日はこれをやろう」という感じで、自然とスケジュールが立っていました。
でも、Kindle出版は一冊仕上げるのに3ヶ月くらいかかるんです。なので、「今日のタスクはこれ」と細かく決まっているわけではありません。
もちろん何もしないわけにはいかないので、「午前中は集中しよう」とか、「今日はこれを進めよう」とか、そのくらいの大まかなスケジュールで動いています。もともと私は、あまり決められることが好きじゃないんですよね(笑)。なので、その辺は割とフワッとさせています。
働き方そのものも大きく変わりました。
SEOライターをやっていた頃は、朝から夜遅くまでずっとパソコンを見ているような生活でしたが、今は実働が6時間くらいまで減りました。
その分、イベントや交流会に参加したり、Zoomでお話ししたり、そうしたことに時間を使うようになりましたね。
音楽だけは、なぜかずっと続いている
-仕事以外で熱中していることはありますか?
趣味のバンドですね。今も続けています。学生のころからずっと好きでやっていて、気づけば20年以上になります。
もちろん、ずっと同じ熱量で続けてきたわけではなくて、家に楽器はあるけどしばらく触らなかったり、また弾きたくなったりの繰り返しなんですけどね(笑)。担当はベースです。
本業はもちろんもの書きなんですけど、たまに「本業どっちですか?」って聞かれることもありますね。
もともと僕は飽きっぽい性格なんですよ。仕事も長く続かないことがありましたし、アニメなんかもハマると一気に見て、終わったらパッと興味がなくなるタイプです。でも、音楽だけはなぜか飽きないんです。
今のバンドも、前身バンドから数えると6年くらい続いていて、過去最長ですね。
目標は売上ではなく、“移動距離”
-これから挑戦していきたいことはありますか?
そうですね。フワッとした言い方になるんですけど、移動距離を伸ばしたいですね。
最初はWeb完結の仕事が中心だったので、家でインターネットを使って仕事をすることがほとんどでした。でも今は、人に会いに行く機会が増えてきました。
とはいえ、まだ隣の県くらいの範囲なんです。これが大阪だったり、九州だったり、沖縄だったり。お客様がいろいろな場所にできて、仕事をきっかけにいろんなところへ行けるようなライフスタイルになったらいいなと思っています。
旅行も好きになりました。去年は沖縄に行きましたし、来月は鬼怒川へ温泉に行く予定です。近場ですけどね(笑)。
それと、以前聞いた話で印象に残っていることがあるんです。
仕事で成功している人って、物理的な移動距離がすごいらしいんですよ。芸能人の方でも経営者の方でも、あちこち飛び回っているイメージがあるじゃないですか。海外へ行ったり、全国を回ったり。確かにそれって一理あるなと思って。
だから自分も、「収入をいくらにする」とかではなくて、まずは物理的な移動距離を伸ばしていきたいんです。そうしていけば、結果的に仕事の幅も広がって、成功にも近づいていくのかなと思っています。
何かを始める前に、まずは自分と向き合う
-最後に、湯川さんの働き方をどんな人に届けたいですか?
やっぱり昔の自分みたいに、「何かしたいけど何をしていいかわからない」とか、「自分には何もできない」と思っている人ですね。
今はスクールもたくさんありますし、プログラミングでもWeb制作でもライターでも、学べる環境はたくさんあります。もちろん、そういうスキルを身につけるのはいいことだと思うんです。
でも、その前に一度、とことん自分を深掘りした方がいいんじゃないかなと思っています。
そもそも自分は何が好きなのか。
何をやりたいのか。
どんなことに興味があるのか。
そこがブレたまま習い事を始めても、続かなかったり、苦しくなってしまったりすると思うんです。だからまずは、自分としっかり対話すること。
その上で一歩踏み出したらいいんじゃないかなと思います。
まとめ
今回のお話を通して感じたのは、湯川さんが単に本をつくる人ではなく、その人の想いを言葉にする人だということでした。
Kindle出版は、本を出すこと自体が目的ではなく、自分のサービスや想いを整理し、届けるための手段のひとつ。
だからこそ湯川さんは、文章のうまさよりもその人らしさを大切にしているのかもしれません。
そしてもうひとつ印象的だったのが、「何か始める前に、まず自分と向き合う」という言葉でした。
新しいことを始めたいけれど、何をしたらいいかわからない。そんな人にこそ響くお話だと感じました。